大英博物館で国外最大規模のマンガ展、「ゴールデンカムイ」ほか約70タイトル

野田サトル「ゴールデンカムイ」(c)Satoru Noda / SHUEISHA

日本のマンガをテーマにした展覧会「The Citi exhibition Manga」が、イギリス・ロンドンにある大英博物館で5月23日から8月26日にかけて開催される。

「The Citi exhibition Manga」は、国外で開催されるマンガの展覧会として史上最大規模のもの。「There is a manga for everyone!」を標榜し、来場者がマンガについて理解と関心を深め、好みの作品を見つけられるよう、マンガの作り方・読み方を手ほどきしつつ、マンガの歴史や社会との関係性、現代の作品が扱うテーマと表現方法の多様性などを紹介する。

会場には大英博物館内にあるセインズベリー・エキシビションズ・ギャラリーを使用。1100平方メートルの場内に、約50名の作家、約70タイトルによる総計約240点の原画および複製原画、描き下ろし作品などが6つのゾーンに分けて展示される。展示物は現代の作品だけでなく、日本の視覚文化の先達である葛飾北斎や河鍋暁斎の絵画から、マンガをテーマにした現代美術まで多岐にわたる。リードキュレーターはイーストアングリア大学のニコル・クーリッジ・ルマニエール教授が務め、本展のキービジュアルにはテーマが多様であること、ダイバーシティを体現する作品であることなどから野田サトル「ゴールデンカムイ」が選ばれた。

展示の始まりには「導入:不思議の国のアリス――イギリスと日本」と題し、ルイス・キャロルの手がけたアリスの複製イラストと、大友克洋「不思議の国のアリス」などアリスをモチーフにしたマンガの複製パネルを展示。こうの史代が描き下ろしたウサギのキャラクター「みみちゃん」も登場する。マンガの読み方、描き方、出版などを紹介する「ゾーン1:マンガという芸術 The Art of Manga」では、こうのの「ギガタウン 漫符図譜」を通じてマンガ特有の表現記号などを学べるほか、執筆風景やマンガ編集部、関係者談話を映したビデオも観られる。「ゾーン2:過去から学ぶ Drawing on the Past」ではマンガの歴史的ルーツや、現在のさまざまな形態を検証。アナログ、デジタル混在の書店を模した読書スペースが用意され、マンガ雑誌、コミックス、電子書籍などを実際に手にとって読むことができる。さらに大英博物館が舞台である星野之宣「宗像教授異考録」より「大英博物館の大冒険」をフィーチャーした展示や、3月に閉店した東京・神保町の書店、コミック高岡の店内写真パネルも設置される。

「ゾーン3:すべての人にマンガがある A Manga for Everyone」は、さまざまなマンガのジャンルを探究し、来場者がお気に入りの作品を見つけるためのゾーン。スポーツ、冒険、ラブストーリーといった「目に見える」ジャンル、生き方、ホラーといった「目に見えない」ジャンルに分け、尾田栄一郎ONE PIECE」や田亀源五郎「弟の夫」など幅広いジャンルの作品を紹介する。「ゾーン4:マンガのちから Power of Manga」はマンガとファンや社会との関りがテーマ。二次創作にも光を当てるほか、啓発ポスターのような社会的・教育上でのマンガの使用や美術館での展覧会の実績など、21世紀のマンガの発展を見ていく。また京都精華大学国際マンガ研究センターが取り組む「原画ダッシュプロジェクト」についても紹介する。「ゾーン5:マンガとキャラクター Power of Line」では70mの壁を使い、原画と数メートルに引き延ばしたキャラクターの画像を展示。全長17mにおよぶ河鍋暁斎「新富座妖怪引幕」の現物も見ることができる。

展示の最後を飾るのは「ゾーン6:マンガ-制限のない世界 Manga: no limits」。前衛的な作品やデジタルによる表現、マンガを題材にしたアート、ゲームやアニメなどのメディア化、国際的な影響といったマンガの広がりにスポットを当てる。さらに出口にはスマートフォンで撮った写真をマンガ風に加工できるフォトスポットが用意されるほか、ある作家が本展のために描き下ろした3点の巨大原画が展示されるとのことだ。

展示作品一覧

「導入:不思議の国のアリス――イギリスと日本」

ルイス・キャロル「地下の国のアリス」
ルイス・キャロル「子供部屋のアリス」
CLAMP「不思議の国の美幸ちゃん」
星野之宣「アリス」
大友克洋「不思議の国のアリス」

「ゾーン1:マンガという芸術 The Art of Manga」

星野之宣「アリス」
こうの史代「ギガタウン 漫符図譜」
さいとう・たかを「運慶」
さいとう・たかを「無用ノ介」
東村アキコ「雪花の虎」
東村アキコ「海月姫」
東村アキコ「かくかくしかじか」
赤塚不二夫「ギャグほどステキな商売はない」

「ゾーン2:過去から学ぶ Drawing on the Past」

杉浦日向子「百日紅」
大友克洋「さよならにっぽん」
井上雄彦「バガボンド」
手塚治虫「メトロポリス」
手塚治虫「アトム大使・鉄腕アトム」
手塚治虫「リボンの騎士」
赤塚不二夫「ウナギイヌの最期」
鳥山明「DRAGON BALL」
武内直子「美少女戦士セーラームーン」
萩尾望都「ポーの一族」
こなみかなた「チーズスイートホーム」
辰巳ヨシヒロ「劇画漂流」

「ゾーン3:すべての人にマンガがある A Manga for Everyone」

ちばてつや「ブレイブ・ブロッサムズ」
ちばてつや(画)・高森朝雄(原作)「あしたのジョー」
高橋陽一「キャプテン翼」
井上雄彦「SLAM DUNK」
井上雄彦「リアル」
石塚真一「BLUE GIANT SUPREME」
野田サトル「ゴールデンカムイ」
岸本斉史「NARUTO-ナルト-」
尾田栄一郎ONE PIECE」
さいとう・たかを「ゴルゴ13」
竹宮惠子「地球へ…」
松本零士「銀河鉄道999」
石ノ森章太郎「サイボーグ009」
諫山創「進撃の巨人」
末次由紀「ちはやふる」
よしながふみ「きのう何食べた?」
竹宮惠子「風と木の詩」
田亀源五郎「弟の夫」
萩尾望都「柳の木」
星野之宣「海帝」
諸星大二郎「暗黒神話」
ヤマザキマリ「オリンピア・キュクロス」
手塚治虫「ブッダ」
中村光「聖☆おにいさん」
伊藤潤二「うずまき」
映画「九十九(『SHORT PEACE』より)」(監督:森田修平
「妖怪ウォッチ」(レベルファイブ)

「ゾーン4:マンガのちから Power of Manga」

ちばてつや「ひねもすのたり日記」
こうの史代「夕凪の街」
しりあがり寿「あの日からのマンガ」
竜田一人「いちえふ 福島第一原子力発電所労働記」
青山剛昌「名探偵コナン」
北島洋子「アイリス」
高橋真琴「旅情ロマンシリーズ・京都」
竹宮惠子「永遠と陽炎と(『地球へ…』より)」
巴里夫「ゆびきりいちと」
ちばてつや「ユキの太陽」
上田としこ「フイチンさん」
荒木飛呂彦「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」
星野之宣「宗像教授異考録 大英博物館の大冒険」

「ゾーン5:マンガとキャラクター Power of Line」

河鍋暁斎「新富座妖怪引幕」
ちばてつや(画)・高森朝雄(原作)「あしたのジョー」
赤塚不二夫「天才バカボン」
つげ義春「ねじ式」
竹宮惠子「地球へ…」
谷口ジロー(画)・メビウス(原作)「イカル」
鳥山明「DRAGON BALL」
諸星大二郎「海神記」
荒木飛呂彦「ジョジョの奇妙な冒険」
東村アキコ「海月姫」
石塚真一「BLUE GIANT SUPREME」
野田サトル「ゴールデンカムイ」

「ゾーン6:マンガ-制限のない世界 Manga: no limits」

赤塚りえ子「家訓(ディテール)」※インスタレーション
三島喜美代「コミックブックス17-S」※陶器
細野仁美「イギリス発うまいもの天国:セブンシスターズロード」※磁器
panpanya「メロディー(『二匹目の金魚』より)」
松本大洋「鉄コン筋クリート」
村田雄介(画)・ONE(原作)「ワンパンマン」
映画「ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」
映画「ポケットモンスター ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」
「ポケットモンスター 赤・緑」(株式会社ポケモン)
「ポケットモンスターイラストレーション」(株式会社ポケモン)
「ポケットモンスタートレーディングカード」(株式会社ポケモン)

「The Citi exhibition Manga マンガ」

会場:イギリス・大英博物館 セインズベリー・エキシビションズ・ギャラリー
会期:2019年5月23日(木)~8月26日(月)※会期中無休
時間:10:00~17:30(最終入場16:10)※金曜10:00~20:30(最終入場19:10)
料金:大人19.50ポンド、16~18歳16.00ポンド、16歳以下無料(要付き添い)※大英博物館会員は無料
主催:大英博物館
共催:国立新美術館、一般社団法人マンガ・アニメ展示促進機構
協賛:シティグループ
運輸協賛:IAGカーゴ(英国航空)、大日本印刷株式会社